建築設備定期検査の意味と必要性

意外と知らない「建築設備定期検査」
建物の利用者・住人の安全を守るために必要な検査です

建築基準法12条3項に基づく検査です

マンションやビル内にはさまざまな設備が存在しており、その設備が正常に機能することは、その建物の快適性や安全性の面から重要です。建築設備定期検査では、数多くの設備の中でも「換気設備」「非常用照明」「排煙」「給排水設備」など建物の付帯設備を検査します。

建築設備は、気づかないうちに少しずつ劣化が進みます。劣化すれば安全性は下がり、場合によっては必要なときに役に立たないことも……。「建築設備定期検査」は、必要時の正常な作動と被害拡大を防止するために建築基準法12条第3項に基づいて行われる定期的な検査のことです。マンション・ビルのオーナー様や管理組合様は、定期的に検査を行いその結果を特定行政庁に報告する義務があります。

また、検査を怠ってしまうと思わぬ事故が発生し、罰則や社会的責任を問われてしまうリスクもあります。建物の利用者や住人の安全を確保するためにも、適切に検査を行うことが大切です。

こんな建物は検査が必要です

※東京都における対象建築物の一部です。

用途 階数・規模 報告周期
共同住宅 5階以上かつ1,000m²を超える 毎年
事務所ビル 5階以上かつ2,000m²を超える 毎年
病院、ホテル、福祉施設 3階以上または300m²を超える 毎年
スーパー、ホームセンター 3階以上または500m²を超える 毎年

こんな建築設備を検査します

非常照明設備

非常照明は、災害などによる停電時に点灯することで円滑な避難を促す設備で、ほぼすべての検査対象建物に設置されています。2011年の東日本大震災時に東京電力が実施した計画停電の際は、対象地域では点灯したはずです。電源の種類により「内蔵型」と「別置型」に分かれ、また光源の種類によって「白熱灯」「蛍光灯」に分かれます。

【検査内容】
点灯を確認するとともに、照度測定を行います。一般的な白熱灯であれば、1ルクス以上の照度が必要です。照度不足あるいは不点灯の場合は、バッテリー交換などの改善措置が必要になります。

非常照明設備(白熱灯タイプ) 非常照明設備(蛍光灯タイプ)
給排水設備

給水ポンプ、受水槽、高架水槽、排水槽、汚水槽などを検査します。最近では直結増圧ポンプの普及により、検査対象外となる場合(※東京都等)も増えてきています。

【検査内容】
建物により設備の状況は異なりますが、受水槽の防虫ネット設置、ポンプ廻り配管の漏水の有無、衛生状態の良好な維持などを目視でチェックします。

給排水設備(屋外設置型貯水槽) 給排水設備(地下設置型貯水槽)
換気設備

居室を常に新鮮できれいな空気に保つために大変重要な設備です。検査は、おもに寮・ホテル・福祉施設・飲食店の厨房などにある換気設備が対象となります(複合型マンションで地下・1階・2階に飲食店がある場合なども対象です)。その他、居室で窓がない、いわゆる「無窓居室」も対象になります。

【検査内容】
計測機器を使って、良好な換気がされているかどうか、また必要換気量を満たしているかどうかを検査します。

換気設備 換気設備
排煙設備

おもに大規模な事務所ビル、百貨店、スーパー、雑居ビル、内廊下のタワーマンションなどにある、火災時に煙を建物外部に排出する機械式の排煙設備です。建物の規模に合った基準が満たされており、いざ火災が発生した場合に正常に機能するかが重要です。まれに事務所のロッカー・書庫などが排煙口の開閉を邪魔し、開閉障害となる場合があるので、注意しましょう。

【検査内容】
排煙機を実際に作動させて排煙口での風量を測定し、その能力が維持されているかどうかを検査します。

排煙設備 排煙口開放装置

建築設備定期検査の対象範囲は特定行政庁により違います!

建築基準法が定める建築設備定期検査は、特定行政庁により検査対象建物や検査報告内容が異なります。下記では、主たる用途が「共同住宅=マンション」である場合を例にとって比較してみました。

神奈川県 共同住宅については検査対象外(※鎌倉市は除く)。
埼玉県 共同住宅については6階以上の階にあるもの。
千葉県 屋外階段を設けないもので地階または4階以上の階でその用途に供する部分の床面積の合計が100m²を超えるもの。屋外階段を設けないもので3階におけるその用途に供する部分の床面積の合計が300m²を超えるもの。
東京都 共同住宅は5階以上かつ1,000m²を超えるもの。

このように、検査対象建築物の基準は地域によって違うのです。また、これは特定建築物定期調査報告についても同様です。