建築基準法第12条1項に基づく調査です
劇場や百貨店、ホテル、病院、物販店、共同住宅、事務所ビルといった、常に多くの人が利用し、万一大きな地震や火災が発生すると思わぬ大災害につながってしまう可能性がある建物を「特定建築物」と言います。特定建築物定期調査は、万一の事故を防ぐために資格者が調査を行い、調査結果を特定行政庁に報告する制度です。
特定建築物は火災時に備えて防火区画の適切な設定、避難経路の確保、前面空地の確保などの安全対策がなされています。しかし、利用目的や環境、人が違えば安全対策が正常に機能しなくなるケースも出てきます。
また、建築物の躯体や外壁などは経年劣化により老朽化し、ひび割れや浮き、爆裂などが発生します。実際に外壁タイルが落下する事故や、老朽化した看板が落下する事故などが発生しているのです。そのような事故を未然に防ぐためにも、定期的な検査で建築物の劣化状況を把握し、建物の良好な維持管理に努める必要があります。
誰が調査するのか
特定建築物定期調査を行えるのは、以下の有資格者に限られます。
・特定建築物等調査資格者
・1・2級建築士
こんな建物は調査が必要です
※東京都における対象建築物の一部です
建物の用途 | 階数・規模 | 報告周期 |
---|---|---|
共同住宅 | 5階以上かつ1,000m²を超える | 3年毎 |
スーパー・ホームセンター | 3階以上または5,000m²を超える | 3年毎 |
3階以上または30,000m²を超える | 毎年 | |
旅館・ホテル | 3階以上または3,000m²を超える | 3年毎 |
3階以上または20,000m²を超える | 毎年 | |
事務所 | 5階以上かつ2,000m²を超える | 3年毎 |
報告時期と報告年度があります
報告時期
3年ごとの報告 | 5月1日~10月31日 |
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毎年の報告 | 11月1日~1月31日 |
報告年度
29年度 | 事務所・飲食店・遊技場・マーケット・百貨店 他 |
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30年度 | 共同住宅 |
31年度 | ホテル・病院・学校 |
※上記はすべて、東京都の場合です
報告免除の条件
新築の建築物は、建築直後の報告が免除されます。
調査する箇所
【敷地・地盤】
- ・地盤沈下、排水状況、出入口通路の状況
- ・窓先空地及び屋外通路の状況
- ・塀・擁壁の状況
- ・広告塔、広告看板の状況
【建物外部・屋上】
- ・外壁や構造物の劣化や腐食、破損
- ・階段の手すりや屋外階段などの腐食・破損
- ・屋上面、パラペット立上り面、笠木等の劣化損傷の状況
- ・工作物接合部・支持部分等の劣化損傷の状況
【建物内部】
- ・エレベーターの遮煙性能状況
- ・防火扉・防火シャッターの種別と動作・閉鎖障害有無や状況
- ・区画に対応した防火設備の設置状況
- ・非常用進入口の有無
- ・進入口周辺の障害物や可燃物の有無
- ・竪穴区画の劣化状況
- ・室内に面する壁・床・天井の劣化状況
- ・照明器具、採光、換気の劣化状況
- ・アスベスト添加建築材料の使用状況
【避難施設等】
- ・避難時の階段までの距離、通路の確保、手すりの設置
- ・避難上有効なバルコニーの確保、避難器具設置の状況
- ・非常口などから安全な場所までの経路の確保状況
- ・排煙設備、防煙壁、非常用照明装置の状況
- ・出口・非常口の開閉・非常階段の物品放置の状況
【その他】
- ・免震構造建築物の免震層及び免震装置
- ・避雷針の状況
- ・自動回転ドア構造、状況
既存不適格建築物の改善
建築時には適法でも、法令の改正などによって現行法に対して不適格な部分が生じた建物を「既存不適格建築物」と言います。この場合、増築や改築をする際に、現行法規に適合するように改善する必要があります。
建築時には適法だったものの、その後の法改正や都市計画変更などで不適格な部分が生じた「既存不適格」については、改善しなくても罰則規定はありません。ただし、建築物の用途や現在の使用方法を考慮し、改善していくことが望ましいでしょう。